遺言の検認が終わると、次は遺言内容を実現させる段階になってきます。
遺言書を実現するにはさまざまな手続きがあり、遺言ではそれを執行する遺言執行者を指定できることになっています。 遺言執行者は必ずしも指定しなければならないものではありません。しかし、実際は登記の申請や引渡しの手続き、不動産を遺贈するなど、遺言執行者がいないと実現するために手間のかかる手続きが山とあります。
そのため、遺言書で遺言執行者を指定したり、第三者に指定を委託したりすることができます。
遺言執行者の指定は遺言書の中だけで認められていて、それ以外での生前の取り決めは無効になります。 複雑な手続きになると予想される場合は、遺言執行者を複数名指定することも出来ます。 また、遺言で指定を受けた人が遺言執行者を辞退することも認められています。 遺言に指定がなかったときは、相続人や利害関係人が家庭裁判所で選任の請求を行います。 遺言執行者は法律の知識を要するので、法律の専門家に依頼するのが通常です。 遺言執行者は選任を受けると早速遺言の実行にかかります。
遺言の実行手続について説明いたします。
①遺言者の財産目録を作る 財産を証明する登記簿、権利書などをそろえて財産目録を作り、相続人に提示します。
②相続人の相続割合、遺産の分配を実行する遺言に沿った相続割合の指定をして、実際に遺産を分配します。また、登記申請や金銭の取立てをします。
③相続財産の不法占有者に対して明け渡しや、移転の請求をする。
④遺贈受遺者に遺産を引き渡す相続人以外に財産を遺贈したいという希望が遺言書にある場合は、その配分・指定にしたがって遺産を引き渡します。この際、所有権移転の登記申請も行います。
⑤認知の届出をする認知の遺言があるときは、戸籍の届出をします。
⑥相続人廃除、廃除の取り消しを家庭裁判所に申し立てる 遺言執行者はこのような職務をこなしていかなければなりません。 調査、執行内容は相続人に報告していく義務がありますが、執行が済むまではすべての財産の持ち出しを差し止める権限を持っています。 相続人は、遺言執行の職務を終了したとき、それに応じた報酬を遺言執行者に支払います。 その報酬額は遺言でも指定できますが、家庭裁判所で定めることもできます。
遺言執行などの複雑な手続きは、様々な場面で法的な判断が求められるため、行政書士や司法書士等に依頼することが望ましいでしょう。 その方が、手続きごとにそれぞれの専門家に都度依頼をする必要がありません。 また、自筆証書遺言、公正証書遺言を作成する際のアドバイスをもらう事もできます。