「長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)」が届いたら法務局に!
- 投稿日2024/01/05
- 更新日2024/01/05
「長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)」とは、国が不動産の相続登記(名義変更)を促すために送っている通知です。
社会問題となっている所有者不明土地をなくすために、国はさまざまな手を打っています(所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法※詳しくはコチラの記事をご覧ください)。その一環として、相続登記がされていない土地を記録から見つけ、その法定相続人を調査し、通知を送ることで相続登記を促す事業を行っています。「特定所有者不明土地」とあるとおり、土地のみのお話です。
これが手元に届いたということは、すでに亡くなっているあなたの家族名義のままとなっている土地があるはずです。その土地を相続する人を決め、相続登記をする必要があります。通知を受け取ったら、放置しないようにしましょう。それでは、詳しく解説していきます。
長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)は誰に届く?
「長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)」は、登記記録上の所有者が死亡してから長期間(10年以上)相続登記がされていない土地の法定相続人の方の中から1名を選んで届けられます。
「法定相続人」とは、民法で定められた被相続人(主に亡くなった家族)の遺産を相続する権利をもつ人です。遺言書がない場合は、基本的に遺産は法定相続人の間で遺産分割協議を行い、どのように相続するかを決めることになります。
「長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)」を受け取られた方の中には様ざまな事情で、そのような土地の存在を知らなかったという方もいらっしゃると思います。しかし通知を受け取ったら、通知に記載のある土地を相続する権利をもっているということになるので、相続登記を進める必要があります。相続するつもりがなくても放置してはいけません。相続放棄するためにはそのための手続きを経ねば放棄したとみなされないので、要注意です。
相続人全員に通知しているわけではない
繰り返しになりますが、法定相続人が複数いる場合は、その中から1名の方に「長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)」が届くことになります。該当する法定相続人全員に通知しているわけではありません。所在地が判明し、通知を受けとれる可能性が高い方に通知を届けられることが多く、特に対象となる土地の所在地に住民票がある法定相続人宛に届く可能性が高いと思われます。
相続放棄した場合でも届くことがある?
相続放棄の手続きをきちんと済ませていてもまれに書面が届くことがあるそうです。戸籍謄本には相続放棄の有無について情報が載っていないので、法定相続人として通知が送られることがあるからです。相続放棄したのに通知書が届いてしまったら、通知書記載の管轄法務局に連絡しましょう。
長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)にはどんなことが書かれている?
長期間相続登記等がされていないことの通知には、以下の内容が記載されています。
・通知の目的
いきなりこのような通知が届いて困惑される方もいるかもしれませんね。前述した調査の末、登記簿上の所有者(故人)の法定相続人であるあなたに通知している旨がきちんと書かれています。
・対象となる土地の所在
相続登記されていない土地の住所と、何筆の土地があるか記載されます。
・現在の所有権の登記名義人
今現在の名義です。故人の名前になっているはずです。
・法定相続人情報の作成番号
法務局の調査によって、長期間相続登記等がされていないと判断された土地の登記簿には、「長期相続登記未了土地」と記載(登記)されます。また、長期相続登記未了土地の調査や法定相続人の探索で得た情報をもとに、相続関係が記載された「法定相続人情報」も一緒に作成されます。「法定相続人情報の作成番号」とは、この「法定相続人情報」に振られた固有の番号のことです。長期間相続登記未了土地の相続登記を申請する際にこの「作成番号」があると、通常は相続登記に必要な一定の戸籍や住民票を省略して行うことができます。
・管轄の法務局
その土地を管轄する法務局の住所や連絡先が記載されています。
下の画像は筆者が真似て作成した「長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)」の見本画像です。
長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)が届いたらどうする?
期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)が届いたら、通知書の内容を確認して、相続登記をなるべく早く行いましょう。
長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)が届いたら相続登記すべき理由とは?
理由①国がすでに相続関係説明図を作成してくれているから
本来、相続関係説明図は相続人自身で戸籍を収集して作成しなければなりません。当然、戸籍収集を司法書士や行政書士などに外注すれば費用がかかります。それをすでに国の政策で、相続人調査をしてくれているわけです。前述したとおり、法定相続人情報に記載された作成番号を登記申請書に記載すると、戸籍の添付などを一部省略できるのはメリットです。
理由②時間が経てば経つほど相続関係が複雑になる可能性が上がる
通知が来た時点で法定相続人となっている人が亡くなると、さらにその子や配偶者が相続人になります。その結果、相続関係が複雑になり、土地をどう相続するか協議が進みにくくなったり、書類にハンコをもらったりすることが、一層難しくなるかもしれません。
理由③相続登記の義務化によって放置すると過料が発生する
2024年4月1日から、相続登記が義務化されます。相続登記はこれまで義務ではありませんでしたが、今後は義務になります。冒頭で述べたように、相続登記がされないまま放置されて所有者不明土地があまりに増えたからです。義務になると、3年以内に手続きしなければ、10万円の過料が発生します。
長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)が届いたらこの順番で相続登記を
法務局で法定相続人情報を取得
まずは「長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)」に記載されている相続不動産の管轄法務局で「法定相続人情報」を取得してください。繰り返しになりますが、「法定相続人情報」は、法務局による相続未了土地やその法定相続人調査で分かった相続関係をまとめた書類です。「法定相続人情報を出力した書面の提供依頼書」に必要事項を記載し、本人確認書類(運転免許証、マイナンバーなど)とともに法務局に提出すると無料で取得できます。
法定相続人全員で相続不動産をどのように分配するのかを決める
「法定相続人情報」に記載されている法定相続人全員で、該当の土地をどう分配するのか、誰が相続するのか、決める必要があります。法定相続分のとおりに相続するのか、それ以外の方法で分けるのかをまず決めます。
法定相続分で相続する場合は、法定相続人全員の住所・氏名で登記します。法定相続分で登記する場合は、法定相続人の一部の人だけを登記することができません。
法定相続分で相続しない場合は、法定相続人全員で「長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)」に記載の土地を誰がどれを取得するのかを協議して、遺産分割協議書を作成してください。遺産分割協議書に相続人全員が署名・実印を押印します。
もし、「法定相続人情報」に記載されている法定相続人の中に、連絡が取れない方や判断能力がない方、未成年者などが含まれている場合は、司法書士や行政書士に事前に相談しておきましょう。通常とは異なる手続きや対応が必要になる可能性が高いからです。
法務局から届いた「長期間相続登記等がなされていないことの通知(お知らせ)」はあやしくありません!相続登記をしましょう!
ここまでご説明した通り、「長期間相続登記等がなされていないことの通知(お知らせ)」は、法務局が長期相続登記等未了土地解消作業のために法定相続人に送っている文書です。詐欺などの怪しい文書ではないので法務局に確認して、相続登記を進めましょう。
この記事のまとめ
- 「長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)」は、登記記録上の所有者が死亡してから長期間相続登記がされていない土地の法定相続人に届く。
- 相続登記は時間が経って、相続関係が複雑になればなるほど難しくなる。
- 2024年4月1日相続登記が義務化されると、相続人であることを知った日から3年以内に相続登記しないと10万円の過料が発生する可能性がある。
- 法務局から「長期間相続登記等がなされていないことの通知(お知らせ)」が届いた方で、対応方法に迷う場合は司法書士にご相談ください。
ただし、同じ名目の書面で何らかの金銭を要求するようなことがあったら、それは詐欺なので注意してください。法務局が書面で金銭を要求することはありません。