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成年後見制度とは?メリット・デメリットや申立ての手続きを解説

財産/法律

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判断能力が不十分な状態では財産管理が行えず、家族にとっても不利益が多くなります。そこで成年後見制度を使うことで、判断能力が不十分な状態になったときも財産管理などが可能になります。しかし、時間や費用の問題や他の親族との関係について気になる人もいるでしょう。

この記事では、成年後見制度の概要を分かりやすく解説します。制度を利用するメリット・デメリットや申立ての手続きの流れを紹介するので、ぜひ役立ててください。

成年後見制度とは

認知症などで判断能力が不十分な状態では、財産管理や商品・サービスなどの契約などができずに日常生活で不自由な思いをする場面が多くなります

こうした場合に判断能力が不十分な人が日常生活で不利益を被らないように、適切な財産管理や契約行為の支援を受けられる制度が、成年後見制度です。

判断能力が不十分になると、詐欺などの標的にもされやすくなります。支援する人が本人の代わりになることで、そうした不利益から守ることが、成年後見制度の主な目的です。本人の代わりになって支援する人を「成年後見人」と呼び、支援してもらう本人を「被後見人」と呼びます。

成年後見制度が誕生した背景

成年後見制度ができる以前には、禁治産・準禁治産者宣告制度がありました。判断能力が不十分な人を禁治産者・準禁治産者と呼び、事実は公示されるとともに、本人の戸籍にもその旨が記載されていました。そのため、差別や偏見を社会から受ける要因となり、問題視されていたのです。

そこで、平成12年に成年後見制度が誕生しました。成年後見制度は、認知症にかかった人や障がいのある人を特別扱いすることなく、能力を活かしてそれまでの生活を送るために作られた制度です。

それまでの禁治産・準禁治産宣告制度とは異なり、自分で決定できることは尊重しながら、認知症の人や障がいのある人の財産や権利を守っていくための制度として活用されています。

成年後見制度の利用状況

最高裁判所事務総局家庭局が出しているデータによると、令和2年1月から12月までの統計では成年後見の申立件数は合計37,235件で、前年と比較して3.5%増加していることが分かります。

平成28年からは8.7%増加しており、全体的に増加傾向です。後見開始は26,367件で、過去5年では最も少なくなりましたが、保佐開始・補助開始の件数は過去5年で見ると年々増加しています。

被後見人の性別の割合は、男性が約43.4%、女性が約56.6%です。男性は、80歳以上が占める割合が最も多くて34.4%、次いで70歳代が27.6%となっています。女性では、80歳以上が63.0%と半分以上を占め、続く70歳代は19.7%です。割合は異なるものの、男女ともに80歳以上の利用者が最も多く、70歳代がそれに続いていることが分かります。

また、利用開始の要因は認知症が最も多くて64.1%で、全体の半数以上を占めています。それに次ぐのが知的障害で9.9%、続く統合失調症の割合は9.0%です。申立ての動機は、預貯金の管理・解約が最も多くて37.1%を占め、財産管理に関係した動機が多い状況が伺えます。次いで身上保護が23.7%、介護保険契約が12.0%です。

日常生活に支障をきたして制度の利用を開始した人も多く、成年後見制度は財産管理だけでなく、日常生活においても大きな役割を果たしていることが伺えます。

なお、成年後見制度の利用状況の詳細は、下記リンクをご確認ください。

※参考:成年後見関係事件の概況|最高裁判所事務総局家庭局

成年後見制度には2種類ある

成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度の2種類があります。ここでは、2種類の特徴や違いを紹介していきます。

法定後見制度

法定後見制度は、家庭裁判所に申立てをして、審判が確定したときに効力が発生する制度です。被後見人の判断能力はすでに不十分な状態にあり判断能力に応じて後見人、保佐人、補助人が選任されます。

法定後見制度では家庭裁判所が後見人等を選任するため、自分の希望とは異なる人が選任されてしまう可能性がある点には注意が必要です

法定後見制度についてさらに知りたい方は以下の記事をご覧ください。

法定後見制度とは何かわかりやすく解説!手続きの期間や費用を確認

後見人・保佐人・補助人の違い

後見人・保佐人・補助人には違いがあります。支援される人の症状の重さに応じて、与えられる権限も変わります。詳しくは下表をご確認ください。

  後見人 保佐人 補助人
支援される人 被後見人 被保佐人 被補助人
申立てできる主な人

・本人

・配偶者

・親族(四親等以内)

・検察官

・市町村長

対象となる人の主な要件 ・判断能力が常に欠けている状態であること

・買い物などを含めた日常生活で常に援助を必要とする状態であること

・寝たきりであること

・脳死判定を受けたこと

・認知症や知的障害が重度であること

・判断能力が著しく不十分な状態であること

・日常生活における買い物は可能だが、車や不動産の購入及び売却、契約の締結などは困難な状態であること

・認知症や知的障害の程度が中度であること

・判断能力が不十分な状態であること

・買い物や車・不動産などの購入及び売却、契約の締結なども単独で可能だが、援助することが好ましいと判断される状態であること

・認知症や知的障害の程度が軽度であること

与えられる権限 財産管理を行う際の代理権

取消権(日用品の購入などを除く)

借金や相続の承認や不動産の購入などの同意権

取消権(日用品の購入などを除く)

 

なし
申立てによって与えられる権限 なし 特定の事項についての同意権・取消権

特定の法律行為に対する代理権

特定の事項の一部についての同意権・取消権

特定の法律行為に対する代理権

代理権を付与する場合の本人の同意 不要 必要 必要
法定代理人の同意が必要となる行為 なし 財産行為のうち、重要なもの 重要な財産行為のうちの一部
遺言 遺言の作成が可能な状態まで一時的に回復した場合には、医師が2名以上立ち会いしたうえで遺言が作成できる 特に規定の必要はなく、遺言の作成が可能 特に規定の必要はなく、遺言の作成が可能

任意後見制度

任意後見制度は、将来判断能力が低下した場合に備えて、あらかじめ後見人を指定して契約を結んでおく制度です。任意後見契約は公正証書によって締結する必要があります。法定後見制度と異なり、自分で後見人を指定できる点がメリットです。

判断能力が実際に低下した際には、家庭裁判所に「任意後見監督人」の選任申立を行い手続きが開始されます。

法定後見制度との違いが分かりにくいですか?以下の記事で任意後見制度の詳細を解説するので、違いをはっきりさせておきましょう。

任意後見人とは?任意後見制度を利用するメリット・デメリットを解説

 

成年後見人に選ばれる人は限られている

成年後見人に選ばれる人は限られます。それでは、誰が成年後見人に選ばれるのでしょうか。ここで解説していきます。

親族

被後見人の立場からすると、身近な親族が後見人になってくれると安心できますよね?全く知らない第三者に財産管理や保護などを依頼することに抵抗を感じる人も多いと思います。そのため、最高裁判所でも2019年に「後見人は身近な親族を選任することが望ましい」との見解を示しています。この点が親族を後見人とする最大のメリットだと思います。

一方で、親族でもトラブルがまったくないわけではありません。被後見人の財産を生活費や遊興費に使ってしまったり、他の親族に使い込みを疑われたりしてトラブルになるケースがあり、親族だからと成年後見人になったことで、これまでの信頼関係に傷がついてしまうというもあります。また裁判所への報告など、後見人になった方の負担は少なくなく、その不満が募ってしまうこともありえます。このように親族が後見人となることにはデメリットもあるので、把握しておきましょう。

専門家

弁護士や司法書士などの専門家が、専門職後見人として選任されるケースも多くあります。専門家が後見人に選任された場合、後見に関する法律に精通しているため、財産管理や保護などをまるっと委ねられる点がメリットです。親族間でトラブルになる心配がなくなる点も、専門家が後見人に選任された際のメリットといえますね。

しかし、専門家が選任された場合、報酬を支払わなければなりません。親族が後見人になった場合と比較すると、安くはないコストがかかってしまう点がデメリットです。

一度後見人がつくと一生の付き合いになることも多く、継続的にかかる費用が積み重なると、家計の大きな負担になってしまいます。

複数人、法人も後見人になれる

個人だけでなく、弁護士法人や社会福祉法人などの法人も後見人になれます。また、複数人を後見人に選任して、分担して後見を行うことも可能です。個人が後見人になったとき、負担がひとりに集中して重荷となりやすいですが、法人や複数人を後見人とすることで、特定の個人だけにかかる負担が軽減されます。財産管理の後見人は専門職の弁護士、司法書士が担当し、身上監護の後見人は親族が担当するなど役割分担をしておくケースがよくあります。

ただし、複数人が後見人になる際は、何かを決める度に話し合いを行い、意見を一致させなければいけません。場合によっては、時間や手間を要することがあります。

欠格事由に該当すると後見人にはなれない

欠格事由に該当した場合は、後見人にはなれません。欠格事由として挙げられるのは、次の6つのケースです。

  • 未成年者
  • 過去に裁判所から法定代理人・保佐人・補助人を解任された人
  • 破産者
  • 被後見人に対して訴訟をした人やその配偶者・及び直系血族である人
  • 行方不明である人
  • その他、不正行為など後見人として適さない経歴を持った人

 

これらのケースに当てはまった場合、被後見人の財産管理などを任せられないことが分かります。逆に、欠格事由に当てはまらなければ、特別な資格などがなくても後見人として財産管理などを行うことが可能です。

成年後見人が担う役割とは

成年後見人が担う役割は、具体的に何があるでしょうか。ここで主な役割と、後見人に任せられないことを紹介します。

財産管理

被後見人が所有する預金や不動産などの資産を管理し、生活のために必要となる財産の保全を図ります。後見人の行う財産管理は、財産の現状維持が前提です。不動産の売買などの財産行為を行うためには、家庭裁判所にあらかじめ報告しなければなりません。

そのため、積極的に資産運用を行うことが基本的にできない点に注意が必要です。

療養看護

必要となる介護サービスを受けるための契約や施設入居契約を締結などの法律行為を被後見人に代わって行うことを療養看護といいます。住居を定める場合や病院の入退院手続き、要介護認定の申請手続きを行う場合に必要な行為です。

これらの手続きは、本人以外では成年後見人を含む法定代理人しか行えないものです。看護と付いていますが、介護など身体をケアすることを指すのではないのでご注意ください。

後見等事務報告

成年後見人は、被後見人に対して行った事務の内容を、家庭裁判所に毎年最低1回報告しなければなりません。後見等事務報告と呼ばれるこの報告は、裁判所によって厳格に管理を行うための制度で、自ら生活することが難しい人を援助していくうえで欠かせないものです。

被後見人やその家族も、この制度によって信頼性や安全性が確保できるでしょう

成年後見人に任せられないこと

成年後見人ができるのは法律行為であり、事実行為や身分行為は行うことができません

まず、生活や健康の維持管理を行うために労務を提供する行為を事実行為といいます。事実行為の具体例は以下のとおりです。

  • 被後見人の生活用品の購入
  • 掃除・洗濯や庭の手入れ
  • 介護や入浴の介助
  • 施設から病院などへの送迎

 

身分行為とは、法律上の身分関係に関する行為を指します。身分行為の具体例は以下のとおりです。

  • 婚姻届や離婚届の提出
  • 子の認知
  • 養子縁組
  • 遺言書の作成

 

これらの行為は本人の意思を尊重する行為であり、成年後見人には任せられません

成年後見制度の手続き

まずは成年後見人が選任されるまでの手続きの流れから解説します。手続きには原則として本人の同意が必要です。

成年後見制度の手続きの流れ

成年後見制度の手続きは以下の通りです。

ステップ①:家庭裁判所に申立てを行う

申立てを行えるのは本人とその配偶者・四親等以内の親族及び検察官・市町村長などです。

ステップ②:家庭裁判所で審理が行われる

申立て書類や申立人・本人・後見人候補者となる人などの調査のほか、親族の意向確認などが行われます。

ステップ③:家庭裁判所で審判が行われる

家庭裁判所が後見・保佐・補助開始の審判を行います。後見人・保佐人・補助人の選任を同時に行い、必要に応じて監督人も選びます。

ステップ④:告知・通知が行われる

審判の結果が本人に告知または通知されます。

ステップ⑤:法務局で成年後見人を登記する

審判の結果に応じて、家庭裁判所は法務局に嘱託登記を行います。

ステップ⑥:成年後見制度を利用開始する

成年後見制度を利用する前に全体の流れを確認しておき、落ち着いて手続きを進めるようにしましょう。

手続きを行う人

成年後見制度の手続きは、本人や配偶者・4親等以内の親族などが行います。また、検察官や市町村長が申立てることもあります。手続きは自分達でも進められますが、家族などでは日常生活となじみのない手続きが多く、難しく感じる人が多いでしょう

この場合は、司法書士や弁護士などの専門家に手続きを依頼することも可能です。

手続きに必要な期間

後見人を家庭裁判所で選任する場合は、申立てを行ってから3~5カ月かかることもあります。家庭裁判所が照会を行うほか、医師からの意見をもらい参考にしなければならないため、一定以上の時間が必要です。

しかし、被後見人の状態によっては照会作業が省略されるため、もう少し早く手続きが完了するケースもあります。

手続きに必要な書類

成年後見制度の手続きを行うためには、以下の書類が必要です。

本人の戸籍謄本

全部事項証明書が必要です。

本人の住民票

籍附票で代用もできます。

後見人候補者の住民表

戸籍附票で代用もできます。

本人の診断書

家庭裁判所で定められた様式のものに限ります。

本人の、登記されていないことの証明書

成年被後見人・被保佐人などに該当していないことを証明するもので、法務局後見登録課、または全国の法務局・地方法務局の本局で取得できます。

本人の財産などに関する資料

不動産の登記事項証明書や、通帳など預貯金・有価証券の残高が分かるものです。

解任も可能

後見人は解任も可能です。被後見人の状態によっては、後見人が解任されます。また、財産横領などの不正行為や著しい不行跡、そのほか後見の任務を任せるのに不適当な事由が生じた場合にも、解任請求が可能です。

解任の申立てができる人を申立権者と呼びます。申立権者は被後見人本人のほか、被後見人の家族、後見監督人・検察官などが該当します。

成年後見制度にかかる費用の目安

成年後見制度には、どれだけの費用が必要になるのでしょうか。ここで、成年後見制度にかかる費用の目安を解説します。

選任費用

後見人選任の申立てを行う際には、総額で6~10万円ほどかかります。手数料に加え、医師の鑑定費用や戸籍取得費用などが主な内訳です。特に医師の鑑定費用の割合が高く、5~10万円ほどかかります。そのほかの費用はそれぞれ数百円~数千円です。

戸籍謄本などは、準備をする際に手間と時間がかかるため、早めに準備を行う必要があります。司法書士に申立ての手続きを依頼した場合は、上記の費用以外に10万円~20万円の報酬がかかります

後見人への報酬

専門職の後見人の場合、報酬は月額で2~6万円ほど必要です。報酬は、仕事の内容や被後見人の資産内容等を考慮して、家庭裁判所が毎年定めるものです。管理する資産額が大きければ、それだけ報酬額も多額になる傾向があります。後見人の報酬は月額で支払われ、継続的に費用が発生するため、あらかじめ注意しておきましょう。

なお、親族が後見人になった場合は専門職の後見人よりも低額になるケースが多く、支払いなしとするケースもあります。

まとめ 成年後見制度の利用を検討しているなら

成年後見制度は、判断能力の低下した人の日常生活を守るうえで欠かせない制度です。成年後見制度を利用する場合、申立てから実際の利用まで費用や時間も多く必要となるため、早めに準備をしておくと安心できます。

また、成年後見制度にはメリットとデメリットがあるため、それぞれ特徴を把握して、本人にとってより良い選択ができるよう考えなければなりません。

全国シルバーライフ保証協会では、身元保証や財産管理・任意後見のサポートなど、高齢者などの生活の支援を提供しています。成年後見制度の利用を考えている人に対しても、充実したサポートを提供できるので、ぜひ一度ご相談ください。きっと貴方やご家族に合ったプランを提供できます。

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この記事の担当者

斉藤 圭祐司法書士|民事信託士|ベストファーム司法書士法人 社員司法書士

斉藤 圭祐司法書士|民事信託士|ベストファーム司法書士法人 社員司法書士

立教大学法学部卒業。大学在学中に司法書士試験に合格。ベストファーム司法書士法人に入社後、石川事務所、東京事務所、郡山事務所にて司法書士業務に従事。個人の生前対策を中心に、年間50回以上のセミナー開催など、精力的に活動中。

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