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一人暮らしの女性が準備しておきたい老後資金はいくら?

暮らし/生き方

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一人暮らしの女性が、65歳で退職してから95歳まで年金収入のみで生活することを想定した場合、老後資金として1,800万円ほど準備すると安心でしょう。

一人暮らしをしている高齢女性の世帯数は増加傾向にあり、一人暮らしの高齢女性の貧困率の高さも問題視されています。

この記事では、一人暮らしの女性が老後に必要となる資金について詳しく解説。老後資金の不足額の計算方法や、老後資金の内訳、老後資金を形成するための方法についても紹介しているのでぜひ最後までご覧ください。

※当記事では老後を65歳以上と想定

老後一人暮らしをしている女性の経済状況は?

一人暮らしをしている高齢女性の経済状況は高齢男性と比べると芳しくありません。

男女共同参画局の「平成24年版男女共同参画白書」によると2010年時点の単身高齢女性世帯の相対的貧困率※は40%超です。一方で単身高齢男性世帯の相対的貧困率が約30%です。比較すると、単身高齢女性が高齢単身男性よりも生活に困窮しやすい傾向にあることが分かります

。老後に一人暮らしをする女性は男性よりも一層、老後資金の不足に注意しなければなりません。

※国の一定基準(貧困線)を下回る等価可処分所得(手取り収入を世帯人数で調整した所得)しか得ていない者の割合

出典:男女共同参画局|平成24年版男女共同参画白書 第 5 章 高齢男女をめぐる状況等

なぜ単身女性は老後に資金不足に陥りやすいのか?

老後に一人暮らしをする女性が資金不足に陥りやすい理由は大別して2つあります。

一つ目の理由は女性の平均寿命の長さです。女性は男性よりも平均寿命が長いため、その分準備しておくべき老後資金は多くなり、資金不足に陥りやすいとされています。

二つ目の理由は年金です。厚生年金の場合、老後にもらえる年金額は現役時代の収入によって決まります。女性の平均年収が男性よりも低いことは、国税庁のデータなどを見ると一目瞭然です。

男女の年収格差が生じる理由としては、非正規雇用で働く女性が男性よりも多い点などが挙げられるでしょう。現役時代の年収が少なかった女性は、受け取れる厚生年金の金額も少なくなります。結果として老後の資金不足に陥りやすくなります。

また、一人暮らしの女性の中でも特に独身のまま老後を迎えた女性は資金不足に陥りやすいとされています。独身女性は配偶者からの遺産相続がなく、老後に経済面で支えてくれる子どももいないためです。もちろん、既婚女性であっても遺産や子どもなどをあてにできず、資金不足に陥る可能性はあります。

既婚・独身のどちらであっても、現役時代のうちに老後の資金をしっかりと準備しておくことが大切です。

出典:1 平均給与|国税庁 (nta.go.jp)

一人暮らしの女性が準備しておくべき老後資金の目安は?

老後に貧困に陥らないためには、十分な老後資金を準備しておく必要があります。以前にメディアが「老後2,000万円問題」を大々的に報道していたため、必要な老後資金の金額をざっくりと「2,000万円」だと考えている人は多いでしょう。しかし、すべての一人暮らしの女性の老後に2,000万円が必要だとは限りません。

ここでは、一例として2021年の公的データをもとに一人暮らしの高齢女性の老後に必要な資金を計算します。

65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の平均的な支出は月に約15万5,000円です。2021年度における高齢単身無職女性の厚生年金額(第一号)の平均額は月に約10万5,000万円です。支出額とは約5万円の差があります。

つまり、高齢単身女性が平均的な老後生活を送るためには、ひと月約5万円が不足し、その分を預貯金などの自己資金から賄わなければなりません。毎月5万円が不足するとし、65歳に退職してから95歳まで年金収入のみで生活すると仮定した場合、必要な老後資金は1,800万円です。

上記の金額は、平均的な家計支出と年金額との差額をもとに計算されているため、生活レベル次第では必要な老後資金の金額も上下します。たとえば、老後も賃貸住宅に住む場合や、介護施設への入居を希望する場合、厚生年金や共済年金の加入歴がない場合などは平均よりも多くの老後資金が必要になるでしょう。

必要な老後資金の金額は人それぞれで異なります。「老後2000万円問題」といった報道を鵜吞みにしてはいけません。自分に必要な老後資金を計算することが重要です。まずは、現在の生活費や受け取れる年金額などを基に、自分の場合に当てはめて、いくら老後資金を準備する必要があるのか計算してみましょう。

出典:総務省統計局|家計調査報告  家計収支編2022年(令和4年)平均結果の概要

出典:厚生労働省|令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況

自分に必要な老後資金を把握するには?計算方法を解説!

先述の老後資金の金額はあくまで目安です。個人の生活レベル次第で必要になる金額は異なります。たとえば、2022年度の家計収支報告によると住居費の平均は1万2,746円ですが、賃貸住宅に住む場合は賃料が発生しますので、住居費は平均よりも高くなるはずです。

ここからは、自分に必要な老後資金を具体的に計算する方法について解説していきます。

現在の生活費を把握する

まずは現在の生活費を把握するところからスタートしましょう。

下記の項目ごとに個別に金額を算出します。

  • 食料
  • 住居
  • 光熱・水道
  • 家具・家事用品
  • 被服及び履物
  • 保険医療
  • 交通・通信
  • 教育
  • 教養・娯楽
  • その他の消費支出(使途不明のこづかい、仕送り金、交際費など)

紙に書き出せば整理がしやすく、生活費の計算もしやすくなります。すべての項目の金額を算出できたら、次は下記リンク先の「家計調査報告  家計収支編2022年(令和4年)平均結果の概要」上に記載されている費目別の単身世帯の数値と比較してください。

比較することで、自分がどの項目に平均以上にお金をかけているのかを把握できるでしょう。

出典:総務省統計局|家計調査報告  家計収支編2022年(令和4年)平均結果の概要

老後に減る支出・増える支出を予測する

生活費の現状を費目別に把握できたら、老後の支出の予測に進みます。現役時代と老後ではお金のかかりやすい費目が異なるので、現役時代のお金の使い方を前提に老後資金を算出するのはおすすめできません。老後に増える支出・減る支出を計算して、現状との金額差を概算でも把握することで、より具体的な老後資金計画を練ることができます。

老後に支出が増える費目の代表が「医療費」です。年齢を重ねるほどに医療費が増加することが分かっています。2023年時点では、70歳以上の医療費負担は原則2割で、75歳以上は原則1割負担で済んでいますが、今後の制度改正などで負担割合が変更される可能性はゼロではありません。

加齢による病気・ケガの増加の可能性と自己負担割合の変更の可能性を考慮して、老後の医療費は多めに見積もっておくのが安全でしょう。

医療費のほかにも、人によっては持ち家のリフォーム費用や長期の旅行費用といったプラスアルファの費用を勘定に入れることになります。将来の生活費を細かく予想して計算することは容易ではないかもしれませんが、老後の生活の安泰を叶えるためにも可能な限り具体的にイメージするようにしましょう。

老後受け取れる年金の金額を把握する

老後に受け取れる年金の金額を把握することも、老後資金計画を立てるうえでは重要です。年金の金額を調べたい場合は、厚生労働省が提供している「公的年金シミュレーター」の活用をおすすめします。年収や勤続年数などの基本的な情報を入力するだけで、将来受け取れる年金の金額を簡単に算出することができます。

たとえば、22〜64歳まで平均年収300万円で会社員として就労していた女性が65 歳から受け取ることができる年金の金額は、公的年金シミュレーターによると年間で約153万円です。

なお、受給開始時期を遅らせることで年間の受取金額を増やすことができます(繰下げ受給)。同じ条件の女性が、年金の受給開始時期を70歳とした場合の年間の年金額は約218万円です。

平均余命から不足する老後資金を割り出す

老後の予想年間支出と予想年間収入の差額に退職後から死亡までの「平均余命」を乗じることで、老後資金の不足額を算出できます。参考までに、2022年度における65歳女性の平均余命は約25年です。

たとえば、老後資金が年間50万円不足しているケースで考えてみましょう。この場合、年間の不足額である50万円に、65歳女性の平均余命である25(年)を乗じて算出される1,250万円が、最終的な老後資金の不足額です。

算出した不足額をもとに、老後資金の積み立て計画を考えてください。計画にあたっては、何歳まで現役で働き続けるのか、現金だけでなく有価証券や金、不動産などにも分散投資すべきか、賃貸ではなく持ち家にして老後の住居費を減らすべきか、など、多角的に検討を重ねることをおすすめします。

出典:厚生労働省|令和4年簡易生命表の概況 1 主な年齢の平均余命

女性が老後を独りで暮らしていくには老後資金の準備は何歳から始めればいいか

老後に一人暮らしをする予定の女性は、できるかぎり早いうちから老後資金の準備を始めることをおすすめします。少なくとも数百万円以上は必要になるであろう老後資金を、短期間で貯めることは非常に困難です。

たとえば、51歳から65歳までの15年間で1,500万円を貯めようとすると、平均して毎年100万円を老後資金の積み立てに回さなければなりません。これは、平均してひと月あたり約8万円の負担です。一方、31歳から65歳までの35年間で1,500万円を貯める場合は、平均して毎年約42万円の積み立てで済みます。

この場合の月々の負担は約3万5,000円です。

このように、積み立てを始めるタイミングが早ければ早いほど月々の負担も軽くなるので、早期に具体的な老後資金計画を立てて積み立てを開始することをおすすめします。

出典:「朝日新聞」(Reライフ.net)「老後資金はいくらあれば安心? 計算方法と具体的な金額を解説」

老後の資金不足への備え方4選

多くの場合、老後資金の不足見込み額は最低でも数百万円以上に上ります。額が額なだけに「十分な老後資金を準備していけるだろうか」と不安に思う人は多いでしょう。

ここからは、今日から実行できる老後資金の準備方法を4つ紹介します。

貯金する

老後資金の準備方法として最もスタンダードな方法が「貯金」です。老後資金の不足金額を退職するまでの年数で割って1年あたりの目標貯金額を算出し、毎月コツコツと貯金します。貯金する場合のコツは「先取り貯金」を習慣化させることです。毎月の収入を受け取ったらすぐに決めた貯金額を貯金用口座に移します。

先取り貯金によって、一定の金額を毎月着実に積み立てていくことができますし、貯金を差し引いた金額で生活費をやりくりする習慣もつきます。

貯金は堅実な老後資金の形成方法ですが、金利がほとんどつかないので自分が貯めている金額以上に増えることはありません。資産形成をしていく観点からは優れているとは言えません。後述する投資や保険といった方法に軍配が上がるでしょう。

また、日本円の価値が下がるリスクやインフレーションのリスクなどを鑑みると、貯金のみに頼るのは避けたほうが無難かもしれません。

資産運用する

老後資金を効率的に形成していきたいなら、資産運用を検討してはいかがでしょうか。代表的な運用方法に「iDeCo」や「NISA」があります。「iDeCo」や「NISA」には税制優遇制度があり、節税効果のある運用方法だと言えるでしょう。

資産運用は効率的な資産形成方法であるとされていますが、ノーリスクで資産が増え続けるわけではありません。投資する商品によっては、元本割れで資産が目減りする可能性があります。

そのため、資産運用をする場合は必ず余裕資金の範囲内で行うことと、投資する商品のメリットだけでなくリスクもよく理解した上で行うことが非常に重要です。また、日ごろから情報収集や自衛に努めて、怪しげな投資話に乗せられないように注意しましょう。

保険を活用する

貯金が苦手で、かつ、資産運用には気が進まないという人は民間保険の活用を検討してはいかがでしょうか。

保険商品の中には、老後資金の形成に適した商品があります。一定の年齢まで保険料を支払い続けることで、満期後に毎月一定額の給付を受けることができる個人年金保険が典型例です。なお、個人年金保険にもさまざまなタイプがあります。

被保険者が生存する限りは給付を受けられるタイプや、被保険者が死亡しても一定期間は給付されるタイプなどがあるので、目的に応じたタイプを選択するのが良いでしょう。

ただし保険の場合、プランを変えにくかったり、途中で解約すると元本割れをしたりするので注意しましょう。

老後も収入を得る方法を考える

貯蓄、資産運用、保険といった手段をもってしても十分な老後資金を確保できないことが予想される場合は、老後に年金以外の収入を得る方法を考えましょう。

ひと月あたり5万円の収入でも、老後に1年でも長く働くことができればその分だけ老後資金を増やすことができます。

都市部であれば高齢者歓迎の求人も増加しているので、職探しのハードルはそれほど高くないでしょう。老後の収入につながるように、現役時代から副業を始めて経験を積んでおいたり、資格を取得したりすることもおすすめです。

老後資金の準備にとりかかるタイミングが遅くなった人は、ぜひ選択肢の一つとして検討してみてください。

まとめ 女性の一人暮らしは大変!老後資金の資金不足に備えよう

一人暮らしの女性は、一人暮らしの男性よりも老後の資金不足に陥りやすいことがわかっています。年金だけでは平均的な生活を送ることが難しいと予測できる場合は、現役時代のできる限り早いうちから老後資金の準備にとりかかりましょう。

準備にとりかかるタイミングが早ければ早いほど、余裕をもって老後資金を形成していくことができます。

高齢者が一人暮らしをするには、老後資金の確保ももちろん重要ですが、他にも暮らしに関する様々な備えが必要です。以下の記事を参考にどのような備えが必要か学んでおきましょう。

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この記事の担当者

吉野真浩AFP|ベストファーム株式会社

吉野真浩AFP|ベストファーム株式会社

早稲田大学卒業。税理士法人勤務を経て、ベストファーム入社。AFPなどの資格を活かし、現在はベストファーム東京本店でマーケティングを担当。

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